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きいたんとルー 銚子電鉄の話。

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きいたんとルー 銚子電鉄の話。




昔々、千葉県の銚子というところ、
大体、チーバ君の耳の辺りに、
銚子電気鉄道という、鉄道会社がありました。
大正2年に地元の有志によって設立され、
路線距離は6.4km。
朝の通勤ラッシュを除けば、
1時間に1本あるかないかの、ちいさい鉄道です。
ワンマン運転ですが、運賃収受のために車掌さんが乗っています。

それでも、毎年一月一日には初日の出を見に来るお客さんのために、
JR東日本の臨時特急に合わせ、
特別ダイヤを組んだり、終夜運転を行っていました。
各駅には自動販売機が設置されていて、
内蔵されている電子掲示板で電車の運行状況を表示しています。
エコです。

そんな銚子電鉄でしたが、経営がよろしくなく、
千葉交通から、ある総合建設業社に買い取られ、
子会社になりました。
会社が変わっても、やっぱり赤字続きで、
県と銚子市の支援を受けながら細々運営を続けておりました。

けれども、2006年8月のことです。
親会社の社長さんが、勝手に銀行から銚子電鉄名義で融資を受けて、
そのお金を全部横領してしまったのです。
他にも、親会社の建設業者に駅舎の改修工事をさせたり、
悪いことをしたので、県と銚子市も怒って補助金を停止してしまいました。
銚子電鉄はお金がなくなってしまい、
ついには車両の法廷検査も出来なくなってしまったのです。

困ったのは鉄道員さんたちです。
「どうちよう、お金がなくっちゃ、
 けんさを、うけられないよ。」
「けんさをうけなくっちゃ、
 でんしゃはおきゃくさんをのせたら、いけないんだよ。」
「でも、でんしゃをうごかさなきゃ、
 おきゃくさんがこまってしまうよ。」
鉄道車両の法廷検査とは、車で言う車検みたいなものです。
これに通らないような危ない車両には、
お客さんを乗せることは出来ません。
けれども、銚子電鉄はその検査自体が受けられないのです。

「何か、いいほうほうはないかなあ?」
「たくさん、おきゃくさんがきてくれれば、
 うんちんで、けんさがうけられるんだけどねえ。」
「でも、おきゃくさんがこないから、
 うちはびんぼうなんだよー」
元々、赤字経営です。
利用する人も限られています。
観光名物でもあればいいのですが、
銚子にはサンマと醤油と海しかありません。
鉄道員さん達は、一生懸命考えました。
「そうだ、でんしゃにのるだけじゃなくって、
 おかいものも、してもらおうよー
 そうすれば、でんしゃちんいがいのうりあげがはいってくるよー」
一番長い距離を乗ってもらっても、運賃は片道310円です。
けれども、一緒にお土産など、お買い物をしてもらえば、
それ以上の売り上げが見込めます。
ネット通販も使えば、電車に乗らない人も、
お買い物をしてくれるかもしれません。

「そうだ、そうちよう! みんなに、おかいものをしてもらおう!」
鉄道員さんたちは、張り切って売り物を考えました。
「なにをうればいいかなあ?」
「おせんべいがいいよー
 銚子のおいちいお醤油をつかった、ぬれせんべいにしようよー」
「ぬれせんべいは、おいちいもんね。
 きっと、みんながかってくれるよー」
銚子には日本を代表するヤマサ醤油があります。
早速、鉄道員さんたちはヤマサ醤油に頼んで、
美味しいお醤油を譲ってもらい、おせんべいを作り始めました。

おせんべいが出来たら、今度は宣伝です。
「けんさのために、おせんべい、かってくだちゃい!」
「おせんべい、おいちいよ! ヤマサの醤油をつかってるよ!」
鉄道員さんたちは一生懸命、おせんべいの売込みをしました。
電車の中や駅にポスターを貼りました。
近所のホテルにも置いてもらいます。
ウェブサイトで広告もだしました。
キャッチコピーは、
「電車修理代をかせがなくっちゃ、いけないんです。」です。

「ええー おせんべいがうれないと、
 でんしゃ走らせらんないの?」
広告を見た人はびっくりして、皆でわいわい騒ぎました。
電子サイトや、個人のブログによって、大きな話題となり、
テレビ局も撮影にやってきました。
こうして鉄道員さんたちは、車両検査のお金を稼ぎ出したのです。

「よかったねえ。これでけんさがうけられるよー」
けれども、問題はまだ残っておりました。
車両以外の老朽化が進み、
踏み切りの故障や枕木の腐食によるトラブルがおこり、
国土交通省に改善命令を出されてしまったのです。

「困ったねえ、これじゃあ、ぜんぜんおかねがたんないよー」
「おせんべいも、そんなにたくさん、
 つくれないしねえー」
話題にはなりましたから、おせんべいの注文はあるんですけど、
製造速度が間に合いません。
お客さんがいても、おせんべいがないのです。
お客さんを待たせるわけにも行きませんから、
通信販売を中止しなければいけなくなったくらいです。

再び困ってしまった鉄道員さんたちですが、
がんばったことは無駄ではありませんでした。
ピンチを知った人たちがサポーターとして集まってくれたのです。
「だいじょうぶだよ、てつだってあげるよー」
「みんなで募金をあつめれば、きっとなんとかできるよー」
こうして作られた「銚子電鉄サポーターズ」には、
プロ野球選手もいました。
集まったひとたちは、
踏み切りや枕木を交換するお金を集めただけでなく、
清掃活動、撮影会などイベント開催もしました。
そうしてついに、
国土交通省に改善処置完了報告が提出できたのです。

けれども、悪いことは続くものです。
2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震、
およびそれに伴う福島第一電子力発電所事故などによる、
風評被害をうけ、観光のお客さんが全然いなくなってしまったのです。
「もう、がんばれないよ・・・」
「もう、どうしたらいいか、わかんないよ・・・」
いくら少なくても、お客さんあっての鉄道会社です。
2012年に銚子電鉄は経営の自主再建を断念することを発表しました。

その後、施設管理と運行の分離など、
何とかいい方法がないか、電鉄以外の人も一緒に皆で考えました。
経営刷新を勧めるといいます。
そこに、県と銚子市だけでなく、国もやってきました。
「ちょうがないね、でも、がんばったよ。」
「また、てつだってあげるよ。」
そして当面10年間に必要な資金の1/3を国、
1/6を県と銚子市が出してくれることになり、
銚子電鉄は残りを頑張って稼ぐ計画表を出しました。
それに、皆が賛成しましたので、廃線を免れることになったのです。

鉄道員さんたちも、また、お煎餅を売り始めました。
「犬吠駅ではおせんべいをつくっているところが見れる、
 ちょくばいじょがあるよ!」
「いちにちじょうしゃけんには、
 ぬれせんべいの交換券もついてるよ!」
「ねっと通販も、さいかいしたよ! おせんべい、かってね!」
いまでも、ぬれ煎餅は高速道路のパーキングエリアや、
成田国際空港の売店、道の駅、農産物直売所にも置かれ、
銚子電鉄の主力製品として、
赤字に苦しむ会社の大事な経営資源となっています。
こうして銚子電鉄は、帝国データバンクに、
「菓子・パン類卸」業として、登録されることになったのです。

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津路志士朗
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